日テレの警察密着番組を見た(「警察魂2024」12月4日放送)。MCは元日テレアナ・藤井貴彦。番組内で取り上げられていた「原付バイクのひき逃げ事故」で、VTRを見ていた藤井の「つぶやき」がTV局の実態をよく表わしていると感じた。
ナンバープレート(一部)から所有者の地域を絞り込む様子を見て「へぇ~」。
現場周辺の防犯カメラをひとつひとつチェックして歩く捜査員を見て「いやぁ、地道だなぁ~」。
防犯カメラの映像をつなぎ合わせて逃走ルートを推定すると「おぉ~」。
バイクを特定後、バイク使用者を確認する捜査を行うと言うと「うわぁ~」。
被疑者の倍木植尾捜査員が追走すると「うわぁ、付いていくんだ」。
一般視聴者と同じようなつぶやき(感想・感嘆)をしているが、これがTV関係者がいかに「事実」を軽んじているかが分かる。
どういうことか? 人ひとりの犯罪を摘発するのには、幾重にも「事実」を確認し積み上げる作業が必要だと言うこと。被疑者をあぶり出すのは、そう難しいことではないかもしれない。しかし被疑者が犯罪を犯した「事実」を証拠を以て立証し、始めて検挙できることになる。権力を行使するとはそういうことだ。
これをTV業界に照らし合わせてみると、どこからか「疑惑」の声があがると何の検証作業もなく「疑惑だぁ~!」と垂れ流す。自ら「地道な取材」を行うこともなくだ。「誰々が見たと言っているのを別の人から聞いた」などと伝聞の伝聞でも、おかまいなしに垂れ流す。
そんなことを日常的・恒常的に行っているTV関係者(元アナ)が、「地道だなぁ~」だってさ。お前らだって日ごろ「地道な取材」をしてから報じなければいけない立場だろう。そんなことしたことないから、こんな間抜けな感想が出るんだ、
もちろん、藤井が「風聞を疑惑として垂れ流している」と言っているわけではない。藤井は伝える立場の人間で、取材する立場の人間ではないかもしれない。しかしTV業界人(関係者)として、原稿を読むにも責任があるのは当然だ。
古い話だが俵孝太郎というニュースキャスターがいた。「いた」と言うと怒られるかな。94歳でご存命だ。産経新聞の論説委員を務めた後退社しフリーに。政治評論家として活動するかたわら、文化放送・フジテレビのニュースキャスターを務めている。
俵氏のことで印象に残っているのは、ニュース原稿は必ずすべて事前にチェックし、疑問点は確認すると言っていたこと。少しでも疑問があると「作者ぁ~!」と、原稿作成者を呼び出したという。
普通に考えれば、当たり前のことだと思う。読む(伝える)人間にも責任が伴うのだ。ウソなどもっての外だし、確認できていないことを事実のごとく話すことなどしてはならないからだ。
この「作者ぁ~!」は、原稿作成者にとっても相当のプレッシャーだったといわれる。うかつに憶測や推定などを盛り込もうものなら、俵氏から「作者ぁ~!」と矢継ぎ早の質問が飛ぶからだ。お互いが良い緊張関係の中、「正確」な報道を心がけていたということ。
しかし現在のTV(新聞もだが)はどうだ? 「疑惑だぁ~!」と報道している内容の、どれくらいを自ら取材・確認しているのか? 警察の地道な捜査を見て「地道だなあ~」なんて感想が出るのは、「地道な取材」をしていない証拠だ。自らに自信があれば「当然の捜査ですね」との感想にならないといけないのは言うまでもない。
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