朝日新聞の「論説委員の序破急」というコラム(不定期)に、「『日本の民衆が火の中に』 中国大使のけんか腰発言は適訳だったか」との見出しで記事が載った(5月30日)。筆者は論説委員・村上太輝夫。村上は「国際社説担当」だそうだ。

これは呉江浩・駐日中国大使が、台湾の頼清徳総統の就任式に合わせて中国大使館で開いた座談会での「日本という国が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになるでしょう」との発言を扱ったもの。

村上のコラム見出しを見ると「発言は適訳だったか」とあり、普通に読めば「誤訳の可能性がある」ということだろう。しかも、コラムは「これは誤訳ではないか。中国出身で東京在住の研究者が違和感を覚え、私に連絡してくれた」で始まる。つまりは中国大使の発言趣旨は違うということか?

では村上は、記事中では何を言っているのか? 結論から言うと、「呉大使擁護」ひいては「中国擁護」をしようとしているだけの、朝日の典型的な「見出し詐欺」「悪質印象操作」だということ。

呉大使の発言は多くのメディアによって報道されている。読もうと思えば全文が読める。それなのに下手な擁護を試みて、支離滅裂な文章になっている。しかも主語を意図的に書かないなどして「曖昧」で「ぼかし」ている部分が多いので、結局「何が言いたいの?」となっている(苦笑)。

村上本人もコラム中で書いているが「(呉大使は)流暢な日本語で『火の中』と言っている」。誤訳とか出てくる余地はないのだ。 村上が言う「誤訳」って何? となる。ここから村上のロジックは迷走する(苦笑)。

「大使館のサイトに掲載されている中国語版で該当部分を探すと『火坑』と書いてある」
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「(火坑は)もとは仏教用語で焦熱地獄を指す」
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「(日常用語では)境遇の非常に困窮していること、要するに『苦境』だ」
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「『火の中』は完全な誤訳とまでは言えないにせよ、稚拙な直訳である」
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「だから『火の中』は戦火のような物騒な意味ではなく、苦境に陥るという程度のこと」

つまり、村上は「火の中」はせいぜい「苦境」ぐらいの意味合いだと主張したいようだ。「戦火に巻き込まれる」とか「灼熱地獄に堕とされる」とか、そんな物騒なことではないよと、一生懸命言っていることになる。

これが村上がタイトルに書いた「適訳だったのか(つまりは誤訳)」であり、中国出身の研究者(実在の人物かさえ不明)が感じた「誤訳と感じた違和感」だということ。

稚拙なロジックに笑うしかない。村上も書いている通り、呉大使は「流暢な日本語」で話している。それを中国大使館が中国人向けに中国語に訳し、サイトに掲載しているものだ。

呉大使が中国語で「苦境」と話したのを、大使館が「火の中」と日本語に訳したんじゃないぞ。何が「完全な誤訳とまでは言えないにせよ、稚拙な直訳である」だ。それなのに「原文が中国語で、それを大使館スタッフが日本語に訳したとみるのが自然だろう」とも書く。文章は破綻しており支離滅裂。

呉大使(ひいては中国)を擁護しようと「見出し詐欺」を行い、記事中も変なロジックで一生懸命「誤訳」主張するが、単に村上の「中国さまぁ~!」をさらけ出しただけ。

でも、これだとバレバレすぎて批判を浴びることが分かっているのだろう。最後の方にちょこっと「訳がどうであれ、日本国民を巻き込んで大変なことになるぞ、という警告であることに変わりはない」「日本社会の反発を招くやり方は賢明ではない」とアリバイ文を入れる。

でも村上よ、最後に余計ことなど書かない方が中国さまから褒めてもらえるぞ。老後に中国から養ってもらえなくなるぞ。箱田哲也のように「習さま万歳! 一路一帯ブラボー!」「金大将軍さま万歳!」とあからさまに書いたり話したりする方が、老後の心配がないぞ。