衆議院の3補選をいずれも立憲民主党が制した。まあ、これはこれで「民意」なのでしょうがない。そのうち島根1区の亀井亜紀子、長崎3区の山田勝彦は「世襲候補者」だった。当選したので「世襲議員」だ(いずれも元職、前職なので、初当選というわけではない)。

あれ、立民って「世襲」をかなり批判していなかったっけ?

思い起こされるのが、昨年4月の山口2区補選。自民党の候補者は体調不良で引退する岸信夫前防衛相の長男。対する立民は共産党と候補者の一本化を行い、立民元職が無所属で出馬(この元職はどうしようもないクズで、個人的には人としてまったく評価しない)。そして盛んに「(世襲は)利益集団に結びつき、偏った政治が行われる」などと批判していた。

立民のこういう「ご都合主義」はいつものことだが、実は朝日新聞も同様だ。補選は自民党が勝利したが、得票率の差は5%差しかなかった。朝日は自社の世論調査の結果(投票先の決め手として「世襲」「安倍政治」が要因となった)から、僅差ということは「世襲」「安倍政治」批判が結果に表れたとのロジックを使った。

安倍元首相の親族候補相手に、極左に近い立民候補者が善戦したことに相当気を良くしたようだ。7月26日には「政治家の世襲 政党は制限の検討を」との社説まで書いている。「新しい人材への門戸を狭め、既得権益の温存にもつながる」「政治の活力を失わせる」とし、「本気で世襲制限を検討してほしい」と締めている。

そんな朝日は今回の衆議院補選(候補者や結果)をどう報じたか? 想像する通り、社説で「本気で世襲制限を検討してほしい」など書いたことを忘れたかのようだった。立民を批判することもなく、逆にこんなことを言い出した。

島根1区で亀井亜紀子が勝利した関連記事では、「島根を始めとする自民王国は、地盤を継ぐ世襲議員が目立つ。このため島根では政治家の世襲への拒否感が薄い」「しっかりとした人物であれば、世襲の政治家に任せたいと考える人も少なくない」「世襲が安心感につながっている部分さえある」と書く。

これは朝日記者が書いた文章ではなく島根大准教授にしゃべらせた内容であるが、あれだけ世襲を批判していた朝日が、立民が勝つとこうも「ご都合主義」的に世襲擁護を始めるのには笑うしかない(朝日が大学教授などに自身の言い分を代弁させるのは常套手段)。

先に書いたように、3補選での立民候補者の2名は世襲候補者(元々は世襲議員)だ。朝日は立民に対して「新しい人材への門戸を狭める」「(勝ったとしても)政治の活力を失わせる」と批判しなければいけないのではないか?

しかし逆に島根での世襲を「世襲が安心感につながっている」って何? 自民の世襲は「悪い世襲」で、立民の世襲は「良い世襲」もしくは「しがらみのない世襲」とでも考えているのか?

こういうご都合主義を恥ずかしいと思わない恥ずかしさ。さすが朝日だ(苦笑)。