読売新聞が1月6日「石川・穴水の避難所、40~50代の集団が自販機破壊し金銭盗む 目撃者『避難所がパニックに』」と報じた。内容は能登半島地震での避難所となっている石川県立穴水高校で、1日の夜に自動販売機が壊され中から飲料と金銭が盗まれていたことが目撃者の証言で分かった、というもの。
記事によると、同日午後8時ころに40~50歳代の男女4、5人の集団が校内に入ってきた。集団は「緊急だから」とだけ話し、チェーンソーとみられる道具を使って自動販売機を破壊し、飲料水や金銭を盗んだという。
目撃者の男性は「けたたましい音が学校中に響き渡っていた。避難所はパニックになり、誰も止められなかった」とおびえた表情で語った。同校の校長は「避難者も不安に感じているので、許せない」と憤ったと書かれている。
この記事はヤフーニュースに転載され、大きな反響を呼んだ。そりゃそうだ。被災して大変な状況下、飲料水ばかりでなく「金銭」まで盗むという行為に驚愕したからだ。
ところが、その後奇妙な展開を見せる。
同じ1月6日(23時29分)に地元紙・北國新聞が、この自販機の件についての記事を配信した。それによると「穴水高で1日夜、男女数人が自動販売機を壊し、同校の避難者用に飲料水を置いていったとみられることが、同校などへの取材で分かった。自販機を壊した人は『自分も避難者で、飲み物を確保するために自販機を壊していいか(管理者に)確認した』と話しており、石川県警は事件性はないとの見方を示している」。
ん? 北国新聞によると、避難者(+アルファ)が「緊急避難」的な意味合いで飲料水を確保するための行為だとある。金銭の盗難については不記載のため不明。管理者にも連絡したとある。ただ、この管理者は高校校長ではないのは明らかなので、行為者の言い分のみだろうと思われる。
ただ、読売の記事とは、自販機を壊して飲料水を取り出したことは同じだが、その行為自体の背景や目的が大きく違う印象を受ける。
この後、読売が不可解にも6日の記事を削除。不可解と言うのは、理由など一切説明無く削除したから。おいおい、一言言えよ。削除し逃亡なんて、朝日新聞や左翼連中の常套手段じゃないのさ。
読売は一応は部数日本一の新聞なので、朝日とは違って続報を流し始めた。逃亡しっ放しって訳ではないようだ。
1月20日になって自販機設置会社が石川県警に被害届を提出したと報じた。ここでも同校校長の「高価な自販機を無断で壊されていたことを、後で知人から知らされた」との証言を載せている。読売は校長は「許可を出していない」と言っていると強調したのだ。ただ、削除した初報で書いた「窃盗」のニュアンスは薄めた書き方。金銭の窃盗にも触れていない。
さらに翌日(21日)、「別の自販機2台も何者かに壊されていたことが分かった」「県警は器物損壊事件にあたる可能性もあるとみて、詳しい状況を調べている」と、単純な被災者の「緊急避難」的措置というわけではないよと匂わせている。
そして刑事法学の大学教授を引っ張り出し、「器物損壊に当たるのは明らかだ」「刑法上の『緊急避難』が成立すれば処罰されないが、自販機内の飲料を今すぐ飲まなければならないほど命の危険が迫った状況でなければ適用は難しい。地震発生直後で、大変苦しい状況だったろうが、飲料水の確保だけでは切迫性に欠ける」とコメントさせ、自社報道の補強にしている。
どうやら読売は、「窃盗ではないけど器物損壊」との路線に変更したようだ。ただ、読売が報じた「金銭が盗まれていた」はどうするつもりだ?
さらに23日には、「自販機破壊で1人から謝罪」と報じ、自販機設置会社は「罰するつもりはない。平時であれば被害弁済を求めるが、今回は事情が異なるため申し出を断った」と配信。同日、北国も同様の記事を配信している。
これらの流れを見ると、読売の初報は「行き過ぎ」だった気がする。特に「金銭を盗んだ」はあやふやだ(その後出てこない)。読売は初報の内容、及び削除した経緯も含め説明しないといけない。これは報道期間の責務だ。初報で書かれた男女4人には、金銭窃盗の嫌疑がかかったままだ。事実なら有耶無耶にしてはいけないし、誤認(誤報)なら謝罪が必要ではないのか?
その後、この件についての続報は無い。読売はもう終わったことと捉えているのか。初報の内容、削除の件は説明責任があると思うぞ。天下の読売が朝日や極左連中と同じことをしていていいのか?
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