中国の2022年の軍事費は約3,470億ドルで日本の6倍以上だ。1988年から伸び率は約10.7倍にもなっている。米国ですら2.9倍だ(日本は同期間で約1.8倍)。一方で、北朝鮮は2022年に約70発の弾道ミサイルを発射した。過去最高だ。

そんな状況にもかかわらず、朝日新聞は1月5日の社説「北朝鮮の挑発 負の連鎖 断つ外交を」で、「力に力で対抗する危うい連鎖に歯止めが必要だ」「外交を再起動させよ」と書く。いつもの「話せば分かる」だな。相変わらずの論説に呆れるとともに笑ってしまった。

この社説は対北朝鮮に関してだが、対中国に対しても過去から同じようなことを言っている。中国の軍事的横暴には目をつむり、アリバイ作り程度の批判しかしない。

中国が台湾周辺区域で大規模な軍事演習を行った際は、「結託する米国と台湾を震え上がらせるものだ」「事前の警告に耳を貸さなかった米台の側に非がある」などと、中国の言い分を一方的に垂れ流した。

ちなみに、この時の朝日の中国への批判は「過剰反応だ」と「危険極まりない」。これって批判と言えるのか?

そんな朝日は「力に力で対抗する危うい連鎖」「軍事偏重の構えがかえって軍拡競争を招く」と、なぜかその脅威を受ける日本側に自制を求める。おいおい、言うべき相手が違うだろう。こんなアホらしい社説を昨年来、何回も紙面に載せている。

日本が「敵基地攻撃能力の保有」を言えば発◯し、「トマホークの導入」を言えば中国や北朝鮮を心配する。本音は「トマホーク? 北京や平壌に届いちゃうぞ! とんでもない! 反対反対ぃ~!」。

朝日の過去の社論(社説)や記事から推察するに、朝日が日本に求める安全保障(防衛)の在り方は、「留学生など市民レベルの交流を増やして、日本の価値観と文化を世界に広めれば、相手が見方になる(つまりは攻撃してこない)。万が一ミサイルを撃ち込まれても、1発なら誤射かもしれないから騒ぐな」。

明治期に外相として不平等条約の改正に辣腕を振るった陸奥宗光は、「兵力の後援なき外交はいかなる正理(正しい道理)に根拠するも、その究極に至りて失敗を免れざることあり」と言っている(日清戦争後の三国干渉を受け)。

軍事力を背景に「問答無用」的に威圧してくる相手に、徒手空拳で「話せば分かる」と対抗するのは外交交渉として成立しないのは明らかだ。