小泉元首相が北朝鮮を訪問し、金正日総書記と会談してから20年が過ぎた。会談は拉致被害者5人の帰国(後に関係家族も)に繋がったが、その後は大きな進展もない。
拉致被害者のご家族も亡くなった方が多く、残された時間の少なさを痛感する20年である。新聞各紙もこの問題を社説で論じている。読売・産経・朝日・毎日の各紙社説を読んだが、どこも似たり寄ったりでたいした中身はない。
その中でも、朝日の社説は論外と言える(9月17日「小泉訪朝20年 平壌宣言の原点に戻れ」。なぜ論外かというと、小泉訪朝を「戦後処理」としているからだ(100%否定するものではないが)。当然その前提として、朝日が言う「植民地支配」(実際は併合であって植民地ではない)があり、その清算の一環と考えている。
だから「まあ北朝鮮も悪いが、日本も悪い」をベースとする論調には、一切見るべき内容はない。
朝日は北朝鮮が悪いと一応書くが、その内容は日本と北朝鮮の「関係」であって、拉致問題に関してではない。拉致問題に関しては、当時から北朝鮮は「拉致被害者の多くは死亡したと主張」してたでしょ。それを承知で「日朝平壌宣言」に署名したんでしょと言う。
「日朝平壌宣言」には日本が植民地支配に対する反省と謝罪を明確にしたうえで、国交を結んだ後の北朝鮮への経済協力や支援を行うことが盛り込まれているのだから、その宣言の原点に立ち返れと言っている。
つまり朝日は早く国交を回復し、日本は北朝鮮に経済援助しろと言っているに等しいわけだ。だから早く「対話」を再開しろと書く。
朝日が社説内で何回も「今こそ宣言という原点に立ち戻り」と書くのは、宣言には拉致問題は言及されておらず、北朝鮮側が「遺憾な問題が再び生じることがないよう適切な措置をとる」としかないからだ。
だから金正日が拉致を認めて謝罪したことや、その後横田めぐみさんの死亡日や遺骨を偽装するなど、不誠実な態度をとったことを朝日は問題視しない。
朝日にとって気になるのは北朝鮮の経済回復であり、金王朝の継続だからだ。だから社説内で「(北朝鮮を)放り出すわけにはいかない」などと書く。核開発・ミサイル開発に注力し、ミサイル発射を繰り返してきたのは北朝鮮である。国際的に孤立したのも北朝鮮の行いからだ。「宣言」違反を繰り返してきたのは北朝鮮である。
にもかかわらず、北朝鮮の「宣言」違反には言及せず、日本には「宣言」に立ち返れと言う。相変わらず過ぎて笑うしかない。
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