朝日新聞のご都合主義はいつものことではあるが、何でも飛びついてしまう思慮の浅さには呆れるしかない。6月15日の社説「大雨と防災 自然の力をどう生かす」は、笑いをこらえられないくらいの代物だ。

梅雨を迎え大雨による災害を、自然本来の機能を生かした「グリーンインフラ」という考えで防災を図る手法について書いている。考え方自体を否定するわけではないが、朝日の「特定の意図」と「都合の悪いことには触れない」が酷すぎて(苦笑)。

「持続可能な社会」「堤防やダムといった大型構造物(中略)からの転換」など、朝日好みの言葉が並ぶ。そして「樹木は森林の保水力を高めて斜面の崩壊を防ぐ」効果があるので「自然を生かし活用する方向へ大きくかじを切れ」と書く。

ところが、朝日が主張する「原発ゼロ」「再生可能エネルギーをメインに」とは、ことごとく相反することになる。再エネの代表格は太陽光発電だ。これには大量のソーラーパネルを敷き詰めなないといけない。日本各地でメガソーラー発電が行われており、また新規計画も多い。ソーラーパネルを敷き詰めるには、多くの山林(樹木)を伐採し、用地を確保しなくてはならない。

個人的な試算では、東日本大震災前当時の原発による発電量を太陽光発電ですべて賄おうとすると、関東甲信越すべてにソーラーパネルを敷き詰めないといけない。日本全国はげ山ばかりになる。(「朝日新聞の『再生可能エネルギーがぁ~!』を笑う」参照)

朝日が書く「森林の保水力を高めて斜面の崩壊を防ぐ」樹木は邪魔な存在になる。現在でも相当多くの樹木(森林)が伐採されている。

大規模ソーラーパネル (1)
大規模ソーラーパネル (2)
大規模ソーラーパネル (3)
大規模ソーラーパネル (4)
大規模ソーラーパネル (5)
朝日はこういう不都合な事実をまったく書かない。しかもこういうソーラーパネルは、自然災害時に2次災害をもたらす可能性が非常に高い。雨で浸水したり破損しても、太陽光が当たれば発電を続ける(場合がある)からだ。また、破壊したパネルからは環境負荷物質(鉛・セレン・カドミウムなど)が流出する恐れもある。

朝日は「これからは再生可能エネルギーだぁ~!」と「これからはグリーンインフラだぁ~!」と好き勝手に言う。それぞれが相反する可能性が大きいにもかかわらず、関連付けて論調することは絶対にない。関連付けたらそれぞれのメリットは大きく失われ、デメリットしか見えてこないからだ。

こういうのを悪質な印象操作記事と言う。読者を特定の考えに誘導する洗脳記事と言ってもいい。それぞれのメリット・デメリット、さらには組合わせた場合のメリット・デメリットは最低限示すべきだ。それを踏まえ、朝日はこう考えると書かないといけない。

まあ、朝日は「バカな読者に高邁な我々が道を示してあげている」とでも考えているのだろう。傲慢だからな。