東京五輪が閉幕した。いろいろな意見があるかと思うが、選手たちの頑張りとボランティアの皆さん含む大会関係者の努力により、「成功」と言えるレベルであったと思う。コロナ禍の中、やり遂げた事実は大きい。

選手の成績も金27個、銀14個、銅17個の合計58個と過去最高。もちろんメダルだけがすべてではなく、参加選手の一人ひとりそれぞれ感動があった。素直に「選手のみなさん、ありがとう」と言いたい。

朝日新聞は五輪最終盤にあたる8月7日・8日に世論調査を行っている。その中で東京五輪の開催について聞いたところ、(開催は)良かった56%、良くなかった32%と、開催を支持した人が過半数を超える結果となった。

朝日は5月26日の社説「夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める」で、五輪の中止を主張した。しかもその社説中で「五輪は政権を維持し、選挙に臨むための道具」などと侮辱した。そんな朝日が、早速スポーツ部長・志方浩文の「感じたスポーツの原点 でも「『開催して良かった』だけでは終われない」との記事を載せた。

タイトルを見る限り、世論調査結果を意識していることを窺わせる。内容は何とか東京五輪を腐そうと頑張って書いているのだが、余りにも中身がなく笑うしかないレベルになっている。朝日の「部長さん」のレベルが分かるというもの。

1年前の安倍前首相は「完全な形で開催する」と言っていたとか、菅首相が「小さな五輪をレガシー(遺産)に」とメッセージを出せば良かったとか、未だに「理念がぁ~!」だってさ。そして言うに事欠いて「有観客だったらあちこちで混乱が起きただろう」。志方の希望的観測を書いてるだけ。

スポーツ部長という肩書きを持っている志方の記事で、大きな論点が抜けている。多分、志方は意図的に書いていない。書けなかったのだろう。それは朝日が「中止しろ」と書いた事への自己検証だ。総括と言ってもいい。朝日は自ら政治闘争を仕掛けたのだから総括が必要だろう。個人的にはある極左の事件から「総括」という言葉が大嫌いだ。

朝日は「中止だぁ~!」と書いたが、朝日の世論調査で「開催は良かった56%」を、志方はどう考えているか? 朝日は? と言ってもいい。この論点抜きに「開催して良かっただけでは終われない」などと、方向違いの記事を書くことに意味はない。

自社の「中止しろ!」が正しかったと言うなら、根拠を示した上で(感情論でなく)今でもそう主張すればいい。しかし世論との乖離を認め、多少なりとも朝日として反省も含め論考があるなら、正直に書かなければいけない。

それとも、政治部・社会部の主流組からなる論説委員が書いた政治的な社説に、スポーツ部は与していなかった(関係ない)と言って逃げるか?

いずれにせよ言論機関を自称する組織が言い放しで済むんだから、こんな楽なことはないな。うらやましいことだ。