アメリカ大統領選は、もうひと揉めありそうな無いような混沌とした状態。しかし米国反トランプ派のメディアはバイデン勝利の既成事実化を始めている。日本国内でも朝日新聞は11月10日に「米大統領バイデン氏当確 民主主義と協調の復興を」との社説を載せた。

バイデンが次期大統領かは別にして、バイデンで思い出されるのは前回の大統領選(2016年)で、当時のヒラリー・クリントン(民主党候補)への応援演説。

「核武装を持てないように我々が日本の憲法を書いたことを、彼は知らないのではないか。彼は学校で習わなかったのか。トランプは判断力に欠けており、信用できない」

共和党の候補者であるトランプが「日本が在日米軍駐留経費を全額負担しないと言うのであれば、日本は自力で国を守るべきだ。そのために核兵器を保有するというのであれば、それはそれで結構だ」との趣旨の発言をしたことを受けてのものだ。

バイデンは当時現職の副大統領。あまりに正直な発言だが、日本国内の左派陣営は慌てふためいたようだ。

朝日新聞は「戦後の歴史を無視する」「米政府の要人としては異例で、無神経というほかない」「発言は傲慢ともとれる」と批判した。朝日は躍起になって「憲法起草では日本の研究者たちの意見も参照された」などと否定していた。しかしGHQ実務担当者・ケーディスによれば、日本国憲法作りはすべてアメリカ人だけで進められたと言っているので、朝日の言い分はお得意のウソである。

左派系識者はバイデンは過去から失言が多かったし、事実関係の曖昧なことでも思ったことをすぐに口に出して喋ってしまうという性格の人物だなどと、フォローになっていないフォローをしていた。

そんな朝日を始めとした反トランプ派が、バイデンの憲法発言や失言癖のような大統領としての「資質」を、今回の大統領選で問題にした節は見えない。それにしても、4年前に「無神経で傲慢」と批判したバイデンを大統領選期間中ずぅ~っと持上げてきた朝日は、自身の整合性をどうつけたのだろうか?

4年前のバイデン発言は、米国内では何の反響もなかった。アメリカ人からすれば日本の憲法の話などどうでもいいこと。それに常識の範疇でもあり、失言でも何でもない。これを朝日は都合良く利用したんだろうが、日本国内的にはご都合主義といわれても仕方ないだろう。

だから朝日は社説でバイデンを持上げつつも、「『トランプ後』の世界を描く使命は、米国だけでなく国際社会全体で背負うほかない」「この4年で国際社会が学んだ教訓は、もはや特定の大国に多くを頼れる時代ではないということだ」と書く。バイデンが大統領になるのを不安がっているような書きぶりだ。

だったらバイデンが言った「(米国が書いた)日本の憲法」を後生大事に持っている必要性はさらさらないな。逆に率先して憲法を改正して、自分の身は自分で護らないといけないだろう。

バイデンが大統領になれば、国務長官にはスーザン・ライスが有力視されている。ライスは中国が唱えた米中で世界を二分する「新たな大国関係」を容認する考えを示し(あの弱腰オバマですら拒否したというのに)、尖閣諸島問題には「他国の主権の問題には立ち入らない」と発言した「親中・反日」(傾向)の人物であるから尚更だ。

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