日本学術会議が自薦した会員候補6名が任命されなかった件で、政府批判ネタを得たとばかりに左派系メディアが嬉々としている。そんな中、毎日新聞が「ファクトチェック」の名のもとに、自称学者の左翼活動家を擁護している。しかし、その擁護が・・・。

任命されなかった6名に関し、「6人を学術評価ツール『スコーパス』で調べたら全員低評価で、国際的にはとても学者とは言えない」という内容の投稿がツイッターにあった。

スコーパス(Scopus)は書誌データベースで、約2万件以上の論文を調査することができる。また、著者別に著作数・書誌データ・引用数や引用先なども調査することができるので、著者(学者)のレベル確認にも有効だ。ただ、登録論文などは1996年以降の論文に限られるので、超ベテラン学者の論文は検索に引っかからない場合がある。

また、スコーパスには日本語論文は基本的に含まれないので、日本語論文はCiNii(国立情報学研究所の論文検索サイト)などを使うケースが多い。

こういうことを踏まえ、毎日新聞は「ファクトチェック」としてツイッター投稿内容をチェック、記事化している。毎日新聞曰く「スコーパスは英語中心の文献データベースで日本語の論文はほとんど収録しておらず、これを基に日本の人文社会系の研究者を評価するのは適切でなく、誤りだ」(統合デジタル取材センター・牧野宏美)。

牧野は「誤りだ」と断定調に書く。ツイートは「国際的な学者とは言えない」と言っている。これが「誤りだ」だと言うなら、その根拠がない。つまりは牧野はスコーパス以外の評価基準を示した上で、6名が「国際的な学者」であることを証明しなければならない。

また「国際的な学者」かどうかではなく、日本学術会議の推薦基準「優れた研究又は業績がある科学者」かどうかはスコーパスのみでは判断できないと言いたいのなら、そう書かないといけない。その場合でも、どういう評価基準で牧野が「優れた研究又は業績がある科学者」と判断したかを言わないと「誤りだ」などと言えるはずもない。

牧野のファクトチェックと称する記事は、対象ツイートの「何を?」チェックしているのかが不明なあやふやなものだ。「国際的な学者」であることをチェックしたのか、「優れた研究又は業績がある科学者」であることをチェックしたのか。

しかも、どっちにせよその判断基準が何もない。「スコーパスのみで日本の人文社会系の研究者を評価するのは適切でなく、誤りだ」と言うなら、どういう基準で「日本の人文社会系学者」は評価されるのか? それに照らしたら6名の評価はどうなるのか?

これなくして「誤りだ」と書いてはいけない。と言うか、書くことはできないはずだ。

結局は、6名を何とか擁護しようと「間違いだ」と書いたはいいが、逆に6名の学者としての評価を疑問視させる結果になっている。牧野は研究者(学者)とは縁遠い分野の出身だろが、それにしても浅はかな記事だ。

牧野は6名が「国際的な学者」でないことを逆に証明し、また「優れた研究又は業績がある科学者」であることは根拠を以て証明できなかったことになる。これは、日本学術会議の自薦内容が「身内の評価」でしかないことを示すものでもある。

当然、今回の6名に限ったことではなく、会員の多くが「身内の評価」で選ばれているんだろうが。日本学術会議内部から自浄作用的な声が聞こえないことが、それをよく示していると思う。

もちろん学術論文(言語を問わず)の数が、その学者の評価のすべてではない。しかし評価をするに分かりやすい基準であることも事実だ。そういう面からツイッター投稿者はスコーパスの話を出したのだろう。それに対し毎日新聞は否定ありきで記事にした。しかもファクトチェックなどと称して。しかし、逆に「間違いだ」の根拠を何も示せない情けない記事になっている。

牧野のレベルが低いのか、毎日新聞自体のレベルがそうなのか。まあ、どっちでもいいや。所詮、毎日新聞だから。