柔道の強化委員長であり、リオ五輪選手団副団長の山下泰裕氏が柔道の好成績を振り返った。「斉藤の声が、頭の中に出てくるんだよ。『先輩、頼みます』ってね」。斎藤仁氏が亡くなる直前、病床で言われたのが「先輩、頼みますよ」だった。

ロンドンで惨敗した柔道界は、直後に女子選手への暴力的指導、指導者助成金の不正受給など次々と問題が発覚した。全日本柔道連盟の組織が刷新され、副会長となったのが山下氏。そのサポートをしたのが、当時強化委員長だった斉藤氏だった。信頼回復にはリオ五輪で結果を出すしかなかった。

男子の井上康生監督、女子の南條充寿監督とともに、斉藤氏の遺志を継いで五輪でのメダル獲得を目指してきた。井上監督の男泣きは、その象徴だと言える。

斉藤氏が亡くなって1年余り。男子は金2個を含む全階級でメダルを獲得した。女子も金1個、銅4個の成果を上げた。

「斉藤も『先輩、ありがとうございます』と言ってくれている」と山下氏は笑ったが、柔道再建もまだ道半ばだと思う。これからも山下氏は斉藤氏の「先輩、頼みます」の声を聞き、頑張らないといけない立場だ。大変だけど、頑張ってもらうしかない。