6月17日の伊豆半島沖で米国イージス艦とフィリピン船籍の貨物船が衝突した事故は、イージス艦乗組員7名が亡くなる痛ましいものだ。現在も原因調査が続いているが、「どちらに回避義務があったか」が焦点だと朝日新聞は報じている。

海上衝突予防法
その中で、朝日新聞は上記のように図解で「海上衝突予防法」が定める回避ルールを示している。

あっ、朝日新聞は「海上衝突防止法」を知っていたんだ?
なぜなら、昭和63年(1988年)に発生した自衛隊潜水艦「なだしお」が釣り船と衝突した事故では、「海上衝突予防法」など無視し「なだしお」批判記事を書きまくっていたからだ。(毎日新聞も同様)

なだしおの事故の場合、
 ・なだしおが右前方に釣り船丸を確認
 ・なだしおが衝突回避のため右転を行う
 ・なだしお、汽笛信号「短一声 (本船右に回頭しつつある)」を発する
 ・釣り船は「短一声」を理解せず、衝突直前に左転
 ・衝突
の時系列。

上記の衝突防止ルールの「横切り」に関しては、相手を右に見る船が針路を右に曲げると定める。

時系列とルールを照らし合わせれば、どちらの過失がより大きいかは明らかだ。しかし朝日新聞はルールを示さず、「『腕組みして眺めるだけ』目撃者の証言 潜水艦・釣り船衝突」などの見出しで、「救助が遅れた」「見殺しにした」(釣り船の被害者は30名)と大バッシングした。(この目撃情報は誤解であった)

「どちらに回避義務があったか」などの法律論はあっちに追いやり、ひたすら反自衛隊論調で押し通した。

今回、衝突防止ルールを示したのは、米国イージス艦とフィリピン船籍貨物船の事故だからだろう。自衛隊の船舶・潜水艦が絡んでいたら、ルールも示さず自衛隊バッシングをやっていただろうと、強く推認できる。

客観的なものの見方を朝日新聞に期待しても、しょせん無駄なことではあるけど・・・。

*海難審判(高等海難審判庁)では、なだしおの回避遅れ、釣り船の左展の双方に同等の過失があったと採決している。この記事で、なだしおに過失がなかったと言っているわけではないので、誤解なきようお願いする。